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握手

12月某日。
一人の患者さんと、診察終わりに握手をして別れました。

握手。

私は普段必要もなく握手を交わす事はありません。仕事中はなおさら。他意はありませんが。

その患者さんは末期の癌で、プーさんが好きで、風貌もどことなくプーさんぽい優し気なおじいちゃんで、ミッキー好きの私によくミッキーグッズを持ってきてくれました。
日赤にも通院していて、受診日に1階の売店で売っているミッキー柄のボックスティッシュを買ってきては差し入れてくれるのだけど、貧乏性の私はそのミッキー柄で高級なティッシュを使うことが出来ず、未開封のまま4箱も診察室に飾ってあります。

末期の癌で入退院も繰り返していたし、今年は最後だね、良いお年を、頑張って来年また会いましょう、会えればいいね、って握手。

奥様もいつも一緒に付き添われていました。最初は待合室で待ってるだけの送り迎えだったのが、どうせ毎週来るならと月1回の内科診察を受けるようになり、別々に診察室に入っていたのが途中からはいつも一緒に付き添って入ってこられるようになって。

年が明けて2週間ほど、その日は奥様が一人で受付をされました。一人で来院という事は今までなかったので「まさか?」と思いつつ話していると状態が悪く入院されたそうで、入院はしょっちゅうだけど今回は退院できないかもな…って。受診後にもお見舞いに行くというので、話の流れでさりげなく入院している病棟を聞いておきました。昼休みに時間があったらお見舞いに行けるように。
たまたま急用が入りその日には行けず、翌日に日赤へ。1階の売店でミッキー柄の高級ティッシュも買って。たまにはお返ししなきゃ。急に行ったら驚かせてしまうかな…などと思いつつ。部屋番号が分からないので聞いていた病棟を1周、2周…名札をみて回るも名前が無く、仕方なく看護師さんに尋ねると、「その名前の人は院内に入院してません」って。
病院間違えたか?日赤は日赤でも第1だったりとか…なんて思いながら仕方なく帰りましたが、後に聞いたら前日、奥様が来院されたその日の夜に亡くなられたとのことでした。

急用も大事な用事ではありましたが、無理してでも行けば良かったなぁ。状態は良くないと聞いていたし、だから顔を見にとも思ったけど。やろうと思った事はその日にやらなきゃなという一つの教訓になってしまいました。

結局、お別れの握手となってしまいました。
どちらからともなく、でしたがそんな予感があったのかな。